システムのフロントで処理するということ データベースコンサルタントのノウハウちょい見せ

Oracle RDBMSなどのオラクル製品や各種インフラ技術(OS、ストレージ、ネットワーク)といった話題を取り上げます。著者は小田圭二、「門外不出のOracle現場ワザ」、「絵で見てわかるOracleの仕組み」、「絵で見てわかるOS/ストレージ/ネットワーク」などの著作もあります

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システムのフロントで処理するということ

珍しく、システムアーキテクチャの話をしたいと思います。

IT Proに「イベント処理システム」の記事が載っていました。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/OPINION/20081125/319889/
※イベント処理とは、イベント(例:注文が発生など)を契機に処理を発動する仕組みです。

この記事を見て、インメモリDBMSの発想と被るなあと思いました。私は、全部くくって「フロントで返すアーキテクチャ」と呼んでいるのですが、DBMSまで処理を届かせずに高速に処理を行うシステム形態の1つです。
通常のシステムでは、ブラウザからWebサーバー、APサーバーを経由して、DBMSまで処理が届くトランザクションとなります。つまり、バックエンドであるDBMSまでリクエストが届いてしまいます。当然、処理は重いです。

しかし、リバースプロキシ(※)やインメモリDBMSをフロントに置き、可能なものはそこでリクエストを処理してしまうという発想があります
これはイベント処理やトリガー起動、APサーバーのメモリにキャッシュなどの形で実現させます。そして、フロントで処理できない場合のみ、バックエンドに処理を流すという形です。これを私は「フロントで返すアーキテクチャ」と呼んでいます。
※Webサーバーとインターネットの間に置くプロキシ(Webのキャッシュなど)です。セキュリティ強化とキャッシュによる処理の高速化が狙えます。

なお、インメモリDBMSを使う場合、データ保障のためバックエンドに通常のDBMSを用意するのがお勧めです。インメモリDBMSは速いですが、メモリ内のデータは揮発性であるため、障害時に消えてしまう恐れがあるからです(インメモリDBのクラスタリングでデータ保障という手もアリです)。

イベント処理などの「フロントで返すアーキテクチャ」を駆使すると、アーキテクチャの幅が広がると思います。今までは処理量が増えると、DBMSがネックとなってどうしようもなくなっていたシステムでも、これならフロント部分の強化でしのげるかもしれません。また、「フロントで返すアーキテクチャ」は、リレーショナルDBMSの性能でお困りの場合にも使えます(APとRDBMSの間にキャッシュとして入れて高速化を狙うケースです。速くなるかどうかは要件しだいです)。

DB屋さんや、アーキテクトの方には、覚えておいていただきたいのですが、同じようなSQLや問い合わせが繰り返されるシステムの場合(通信業界や金融業界に多いです)、インメモリDBMSやイベント処理をうまく使うと大抵は必要最小限まで劇的に負荷を下げることができます。現在のシステムの性能でお困りの場合、もしくは、いままで「DBMSでは無理だなあ」と思って諦めていたシステムの構築の際に考えてみてください。

なお、例としてOracle社の製品と使いどころを挙げると次のようになります。

Oracle Coherence はインメモリDBMSです。イベント処理機能を持ち、オブジェクト指向であり、かつ、グリッド的に処理を分散させることもできます。データを分散配置させ、複数マシンで同時に処理させることが得意です。上記IT proの記事に一番近い製品だと思います。
Oracle Times Ten もインメモリDBMSです。RDBMSとの親和性が売りです。多くのOracle SQL言語の文法を理解します(対応していない文法もあります)。RDBMSの前のフロントキャッシュとして使うケースが多いです。Times Tenもイベント処理機能も持っているため、工夫しだいでは劇的に高速化できます。

ある方が言っていたのですが、「枯れた製品で枯れたシステムを作るのも良いが、我々は夢を追いかけるのだ。我々の価値は、(障害をおそれずに)新しい価値を実現することだ」という考え方もあると思います。ぜひチャレンジしてみてください。
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[ 2008/12/01 01:11 ] アーキテクチャ | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

Author:odakeiji
小田圭二 日本オラクルのテクノロジーソリューションコンサルティング統括本部においてデータベースのコンサルタントをしている。今までのキャリアでは、社内教育部隊で、データベースやOS、ネットワークを教える経験を5年ほど積んだり、コンサル部門で主にDB(インフラ含む)のコンサルを10年程度経験した。また、コンサルタントとして、主に大規模ミッションクリティカルシステムを担当。社内では”火消し”とも呼ばれ、システムトラブルの火消しをいくつも担当していたこともある。
ポリシーは、「OracleもOS上で動くアプリケーションにすぎない。だから、OS、ストレージ、ネットワークを学ぶべき。アーキテクチャから考えろ」。
スキル面の興味は、アーキテクチャ、DBA、インフラ技術、教育、コンサル手法など。
本ブログのポリシーは「週に1回、DBAやインフラ担当者の役に立つ記事を書きたい」です(守れるだけ、守りたい・・・・)
なお、本ブログにおいて示されている見解は、私自身の見解であって、オラクルの見解を必ずしも反映したものではありません。ご了承ください。

私の主な著書の紹介です。もしよかったら、お役立てください。他にもオライリーなどがあります

●「絵で見てわかるOS/ストレージ/ネットワーク データベースはこう使っている」小田圭二 著
私のポリシーである”DBMSもOSの動くアプリケーションに過ぎない”に基づいて、OSとDBMSの関係、ストレージとDBMSの関係、ネットワークとDBMSの関係、を解説した珍しい書籍です。DBを学んでひと段落したら、DB使いもインフラ全体を意識しなければなりませんが、そのような人にお勧めです。企業ユーザー向けのIT本としては、2008年度翔泳社No1だとか(最後は出版社談)。

●「絵で見てわかるOracleの仕組み」 小田圭二 著
教育に携わる者としての私の思い「丸暗記するな。アーキテクチャを知るべき。絵で説明すべき」を具体化した、Oracleの入門書です。Oracle初心者向きですが、Oracleの基礎となる部分の動きを解説しているため、バージョンに依存せずに何年先でも使えます。逆に、本書の内容を理解せずに、ひたすら丸暗記すると応用力が身につきません。この本を読むだけで何かできるようになるわけではありませんが、アーキテクチャを身につけて、本当の技術力を身につける第一歩として欲しいと思っています。

●「44のアンチパターンに学ぶDBシステム」 小田圭二 著
本書は、企業のDBシステムの設計/構築から運用管理、プロジェクト管理までの各フェーズにおけるトラブル(失敗)事例について、アンチパターン(べからず集)とその回避策/防止策として解説するものです。チェックリストとして使っていただいても構いません。分かっていてもアンチパターンは避けられないことも多いものです(政治とか)。そういう方には、同じ仲間は多いのだなと再認識していただくための一服の清涼剤としていただければと思います。

●「門外不出のOracle現場ワザ」 小田圭二 他 著
一番最初に出た本です。結構とがった内容を扱っています。
・パフォーマンス分析の考え方(私の担当)
・性能テストや障害テストの仕方、設計の注意点(主に私が執筆)
・コストベースオプティマイザ(10gベース)のアーキテクチャ
・コネクションプーリング
最新のOracleの内容は含んでいませんが、今でも性能の考え方やオプティマイザの考え方は使えるはずです。オプティマイザをここまで解説している本を私は知りません。

●「続・門外不出のOracle現場ワザ」 小田圭二 他 著
「続」の名前の通り、次に出た本です。ちょっと尖り過ぎたかもしれません^^; でも本当に使う内容を選んだつもりです。一流になりたい・他の人と差をつけたい人にお勧めでしょうか。
・性能の良いSQLの書き方
・文字化けの仕組み
・障害(特に性能やハング)の分析・対応方法(私が執筆)
・障害をリアルタイムに分析・対処する方法(私が執筆)
・オプティマイザの使い方ノウハウ
・アップグレードのノウハウ

●「データベース」小田圭二 他 著
私にしては堅い本です。なんせ、共同執筆者が大御所の國友義久先生です。階層型DBMS、ネットワーク型DBMS、リレーショナル型DBMS、XMLDBMS、OO(オブジェクト指向)DBMS、DBMSの持つ機能、DBMSのセキュリティ、データベースの著作権、監査、モデリング、正規化といった内容を網羅しており、深い記述は無いものの、DB技術全体を抑えるのに向いている一冊です。ある程度技術力がついたエンジニアの方が、DB全体を振り返りたい(勉強したい)というときの最初の1冊としてお勧めです。



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